EXHIBITIONS
Have you ever seen a ghost?
Tokyo International Galleryでは1月15日より菅原玄奨、東城信之介による2人展「Have you ever seen a ghost?」を開催いたします。
菅原玄奨は1993年東京都生まれ。2016年に東京造形大学造形学部彫刻専攻領域を卒業、18 年に同大学院造形研究科美術専攻領域を修了。「テクスチャーと触覚性」 をテーマに、 FRP(繊維強化プラスチック)や粘土を主な素材とした彫刻作品を発表しています。消費的なファッションをまとって記号化されていく現代人の身体をかたどり、わずかな触覚性と匿名性を強調した作品は、移ろいゆく現代の表層や実態の拠りどころのなさを内包しています。本展ではライフサイズの全身像に加え、高さ3メートルを越える新作彫刻を設置するなど、より空間性を重視した展示構成を試みます。
東城信之介は1978年長野県生まれ、2004年東京造形大学造形学部美術学科比較造形卒業、05年同大学研究生を修了。自身の心象風景や無意識に見えてしまう虚像を、金属板や工業製品の表面に大小の傷やサビなどを施すことで具現化しています。存在というものにフォーカスした制作スタイルを、絵画にとどまらず彫刻やインスタレーション作品など多岐に展開しています。本展では新作7点を発表します。
菅原は「自分とは距離のある情報で溢れかえる昨今、世の事象に対するリアリティはどこか希薄で、いまいち実態を掴み切ることができない」と語ります。
現代、情報は個々人の扱える許容量を大幅に上回り、混迷に至っているのは周知の事実でしょう。必要、あるいは切望する情報はその霧のなかに消え、いくら手を伸ばそうとも確かな手応えはありません。続けて、菅原は言います。「時にそれは自分の身の回りの出来事にも影響し、目の前の現実すら危うく思えてくる」。
一方、「『見えてしまうもの』と自分とのあいだに、現実との距離を感じてしまう」と語るのは東城です。具体的な日常風景から、抽象的心象風景が見えて「しまう」、それらと社会を重ね合わせようとすることにより作品を生み出し、その存在を認識します。クオリア論にも通ずる問題意識を、東城は作品において表現します。
相異なる問題意識を抱える二人ですが、どこか諧和するものがあります。
二人に共通するのは、現代のあらゆる情報や物質、現象のなかにあって、未だ見えないもの、あるいは自らにだけ見えてしまっているもの、それらに疑念を持ちながらも形象/具象を形作ってゆく姿勢です。物体の“表面”に制作の焦点がありながら、その表面とは対照的な内実なるものを浮き彫りにします。二人が観測し形作った事象の表面を、文字通り表面として観るのは私たちであり、そこに新たな世界を観るのも私たちです。
本展タイトル「Have you ever seen a ghost?」という問いにどのように答えるのか。
二人の立ち起こす世界に現れる感覚、触れられない感覚、それらに浸りながら、自らと作品と、あるいは物質、世界との距離を、手探りではありながらも——私たちは確かに探ります。
―アーティストステートメント―
菅原玄奨
彫刻表現における塑造技法を用いて、人や物の存在について考えている。自分とは距 離のある情報で溢れかえる昨今、世の事象に対するリアリティはどこか希薄で、いまいち 実態を掴み切ることができない。時にそれは自分の身の回りの出来事にも影響し、目の前 の現実すら危うく思えてくる。表面だけが露骨に浮かび上がり、本質に辿り着けないもどかしさ。自分が見ているもの、認識しているものとは一体何なのか。私はその疑問に対する答えを、塑造という触覚的な 行為と360°からの視座をもって導き出そうとする。
東城信之介
「見えてしまうもの」と自分の間に現実との距離を感じ、パレイドリア現象(※1)のような感覚で具体的な日常風景から抽象的心象風景が現れることがあります。それは塗り絵とは逆にぐちゃぐちゃな色の中から、アウトラインをなぞり可視化し、時々見える空中の歪みと心象風景、そして社会を重ね合わせ再構築することによって存在を認識しています。
光と影で生まれる像は絶対的ですが、一方それを失えば物質は存在すら否定されかねません。見えていないものはそもそもそこに存在しているのか。そしてそれに確信を持てるのだろうか。
現れた触れられない感覚に、疑念をいだくような空間になればと思います。
※1)パレイドリア(英: Pareidolia)とは、心理現象の一種。視覚刺激や聴覚刺激を受けとり、普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象を指す。
アーティストプロフィール
菅原玄奨
1993年東京都生まれ。2016年に東京造形大学造形学部彫刻専攻領域を卒業、18 年に同大学院造形研究科美術専攻領域を修了。「テクスチャーと触覚性」 をテーマに、FRP(繊維強化プラスチック)や粘土を主な素材とした彫刻作品を発表している。消費的なファッションをまとって記号化されていく現代人の身体をかたどり、わずかな触覚性と匿名性を強調した作品は、移ろいゆく現代の表層や実態の拠りどころのなさを内包する。主な個展に、「Superficial Sensation」(Gallery FOMO、台北、2021)、 「anonym」(EUKARYOTE、東京、2020)、「invisible」(TAV gallery、東京、2016)。グループ展に、「空の器-An Empty Vessel-」(MA2 GALLERY、東京、2021)、「The Metamorphosis」 (EUKARYOTE、東京、2019)など。17 年に「群馬青年ビエンナーレ」 奨励賞を受賞。
東城信之介
1978 年⻑野県生まれ、2004 年東京造形大学造形学部美術学科比較造形卒 業、05 年同大学研究生修了。自身の心象風景や無意識に見えてしまう虚像を、金属板や工 業製品の表面に大小の傷やサビなどを施すことで具現化している。存在というものにフォーカスした制作スタイルは絵画にとどまらず彫刻やインスタレーション作品など多岐に展開している。「SICF18」「VOCA 展 2019」にてグランプリを受賞。翌年には美術館初個 展「口から入って届くまで」(小海町高原美術館、⻑野)を開催。「Sharing the Future」 (タイ・チェンマイ大学)や中国・広州でのレジデンス「対流風景 Convective Scenery 2018」(広州 53 美術館)に参加するなど国内外で活動している。
開催概要
- 展示会タイトル
- Have you ever seen a ghost?
- 開催期間
- 2022年1月15日 (土) – 2月26日 (土)
- 開廊時間
- 12:00-18:00
- 休館日
- ⽇・⽉・祝
- オープニングレセプション
2022年1月15日(土)18:00 –20:00
- 住所
- Tokyo International Gallery
- アクセス
- 東京臨海高速鉄道臨海線「天王洲アイル駅」から徒歩約8分、 東京モノレール羽田空港「天王洲アイル駅」 」から徒歩約10分、 京急本線「新馬駅」から徒歩約8分