EXHIBITIONS

Frangere Magna Caelum

Frangere Magna Caelum

後藤 夢乃 2024年7月6日(土)〜 2024年8月10日(土)

Tokyo International Gallery、作家・後藤 夢乃による
個展 「Frangere Magna Caelum」を開催

株式会社Tokyo International Gallery(品川・天王洲)では、作家・後藤 夢乃による個展
「Frangere Magna Caelum」を開催いたします。

後藤は、神話や伝承、タロットを元に作品制作を行い、長い歴史の中で虐げられてきた人々の悲しみを描いています。その悲しみを紡いでいくための制作を、後藤は「今よりも先に続く世界への橋渡し」と表し、 苦しみ抗う女性たちへの救済の意を込めて制作し続けます。錬成された物質感のある後藤の作品は、隆起した絵の具がまるで現実世界へ迫り出しているようです。
今回の展覧会では、Frangere Magna Caelum (偉大な空を砕く)と題し、これまで描いてきたヌードという象徴から女神や母といった大きな存在へ拡張し、隠すことや纏い直すことの意味を問いながら、神話へのリベンジとして再創造に挑みます。後藤が生み出す幻想世界との狭間をぜひご高覧ください。


ーアーティストステートメントー

ノミを片手に、絵画の美しいと思った箇所に傷をつけていく。

絵に重ねた、赤、茶、黒、紫、翠、青色をした血が流れる。
皮膚を捲った中にある不自然な血と肉のうごめきが、はみ出た身体の表面に現れる。

私たちの悲しさが、何色でどんな形をしているのかを
汚すように治療するように描き、つけた傷から辿っていく。

穴となって広がるその傷で、いつしか世界に裂け目を作れるのではないかと思った。

世界に開いた裂け目は、太陽から流れる風の通り道のようだ。
中世の芸術家たちが描いた処女受胎におけるマリアの上衣の下に入り込んだ、
天から降りる太陽の筒のような裂け目。

見張り塔からずっと今にも崩れそうな足場の周縁から、心地よく空を覗き込みながら逆さまになって、
世界の裂け目に落ちていきたい。鳩が懐妊させに飛びおりていくように。

̶̶̶̶̶̶̶̶̶ 参考文献
エリッヒ・ノイマン=著、「無意識の女性の現象学 グレート・マザー」
28項 ユング「心の構造」一節より


ー展評ー

ようこそ、翠の森を飛翔する魔女たちの世界へ———生命体としての絵画

神話や聖書、文学、芸術には、古くから数多くの女性たちが描かれてきた。
ミレーの《オフィーリア》のように受け身な犠牲者として美化されたミューズ、デューラーやブリューゲル、ゴヤが手がけた魔女たち。官能的で魅惑的な女性と醜悪な老女、どの絵画にもそれぞれの物語がある。けれども、長きに渡って、絵画の世界の女性たちはその声を奪われてきた。

シルヴィア・フェデリーチの『キャリバンと魔女』によれば、魔女とは資本主義が怖れ、強制的に統治しようとした存在であり、モナ・ショレの『魔女』では、女性の自立や自由な生き方を説く存在として語られている。

後藤夢乃の作品も、この魔女たちの芸術の系譜に連なるものである。彼女は、魔女たちが大釜で何かを錬成するように、絵の具やオイル、光や風、土を調合し、魔術的な世界を錬成していく。とはいえ、「偉大な空を砕く」この展覧会では、東洋的な表情を浮かべた女性たちが哀しみを抱えながらも強靭で、柔和な姿を見せ、独自の世界を展開している。

翠の奥深い森、昼下がりに大地に射し込む光、渦巻く川や水の流れ。
大きくもあり、小さくもある絵の数々は、古典的な技法で下地を重ねつつも、砂や土埃が混じり自然と地続きになった鉱物的な質感を伴っている。森は破壊と再生のエネルギーが循環する舞台であり、現代に息づく魔女たちが私たちに訴えかける秘密の儀式の場である。

しかし同時にまたこれらの絵画の表面は、ゴツゴツと隆起し、荒々しく削られ、裂開し、釘に打ち抜かれ、傷を負い、穴が穿たれている。そしてまさしく、その裂け目と傷跡により、絵はその物質的存在を獲得し、生命体として息を吹き返しているように思われる。

水のような色が折り重なった下地は、荒々しく削られた穴や傷跡によって、人間の皮膚がえぐられたときに出現する生々しい血と肉をもつ生命体のようであり、そのなかに、一糸まとわぬ女性たちが息づいている。まぶたを閉じ、あるいはじっとこちらを見つめる彼女たちは、幻想的な二次元の世界には収まりきらず、その境界を越えて私たちが身を置く現実世界に身を乗り出している。思えば、魔女はドイツ語で「Hexe」と呼ばれ、もともと女性に限らない存在だった。語源には「垣根を越える」という意味が含まれる。
世界の周縁に、あるいは絵画の縁に息づく彼女たちは、この元来の意味を体現することで、かつての神話化された女性ではなく、魔女たちの痕跡を継承する独自のラディカルな世界を現代に創出し、観る者を引きずり込んで離さない。彼女たちは幻想的な絵画の世界と私たちの世界との境界を揺るがし、不協和音を奏でる媒介者として私たちに呼びかけ、私たちを誘う。絵画のフレームはそのための窓であり、秘密の扉なのだ。  

私たちは、残酷さと優しさが織り成す世界のなかを泳ぐかのようにこの時空間を体験する。彼女たちは、絵画のフレームを心の箒で飛び交い、絵画の世界を砕く荒々しい裂け目を通じて、ファンタジックな世界でありながら渦巻く野生が根源的に肯定される、真に豊かな世界の可能性を示しているように思われる。

東京藝術大学 大学院 教授
清水 知子

ARTIST PROFILE

アーティストプロフィール

後藤 夢乃

後藤 夢乃

後藤夢乃は、1996年東京生まれ。
2019 年女子美術大学 洋画専攻卒業 。
2022 年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画専攻を修了。
神話や伝承、タロットなどを引用し、現代の空気感を織り交ぜて再構成した絵画を描いている。
幻想的な世界でありながら絵画が現実の世界へ迫り出しているような作品を制作している。

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OVERVIEW

開催概要

展示会タイトル
Frangere Magna Caelum
開催期間
2024年7月6日(土)〜 2024年8月10日(土)
開廊時間
12:00-18:00
休館日
日・月・祝
オープニングレセプション

2024/7/6 17:00-20:00
TAC GALLERY NIGHT
※チケットが必要となります
チケットはTENNOZ ART WEEK|天王洲アートウィークからお買い求めいただけます

会場
Tokyo International Gallery
アクセス
東京臨海高速鉄道臨海線「天王洲アイル駅」から徒歩約8分、東京モノレール羽田空港「天王洲アイル駅」 」から徒歩約10分、京急本線「新馬駅」から徒歩約8分