中間体ーintermediary compoundー

袁方洲(エン・ホウシュウ)
2021年11月6日 - 12月18日

Tokyo International Galleryでは、11月6日より、袁方洲(エン・ホウシュウ)による日本国内、二度目の個展となる「中間体 ―Intermediary compound―」を開催致します。

袁方洲は、中国遼寧省生まれ。2018年清華大学美術学部工芸専攻を卒業後来日。現在、東京藝術大学大学院工芸科博士後期課程に在籍し、東京を拠点に活動しています。中国や日本だけに留まらず、韓国、チェコ、バングラデシュなどグロバールに作品発表を続けています。また、第24回岡本太郎現代芸術賞入選、第14回大分アジア彫刻展優秀賞など今注目を集める若手作家です。

袁は、人・物・自然の関係性に着目し、ポスト・ミニマリズムや仏教などの東洋思想に影響された自身の哲学に基づき、ガラス素材を中心に、立体、絵画、映像など複数のメディアと技法を交錯させる作品を展開しています。袁はガラスの焼成過程で、素材の変質や重力といった自然条件により生まれる偶然できた「かたち」に関心を持っています。さらに、素材に対する研究をきっかけに、身の回りに存在するもの、自身を取り巻く万物を観察することで、それらの事物に対する印象や感覚、記憶をもとに制作を行なっています。

本展は、タイトルにもある「中間体」がテーマとなり展開されます。「中間体」とは、化学分野において「目的とする化学反応の途中に生じる化合物」を意味します。そして、この言葉は袁の作品制作を包括するものでもあります。例えば、本展出品シリーズは、キルンワークという冷えたガラスを電気炉に入れ加熱する技法によって制作されます。その過程では、電気炉による精密な温度調整を駆使することで、造形がコントロールされます。しかし袁にとってはこの温度制御同様に、制御することのできないガラスの膨張や収縮、重力なども造形に影響する極めて重要な要素となります。つまり作品は制作の目的ではなく、制作という偶然性が折り重なる行為そのものに「中間体」の本質があるのです。

袁は作品を生成している電気炉は「ひとつの宇宙」だと話します。その宇宙は事物が自律して存在しているのではなく、その各々が繋がり、変化しあうことで存在しています。袁はこの世界の万物が「中間体」であるヴィジョンを志向することで、彼の作品が、自己と他者、時間と空間といった様々な関係項を繋げる存在たることを希求しているのです。

アーティストステートメント

私はガラスの焼成過程で、素材の変質や重力といった自然条件により生まれる偶然できた「かたち」に関心を持っている。さらに、素材に対する研究をきっかけに、身の回りに存在するものを観察することに惹かれ、ガラス素材を用いて、ものに対する印象や感覚、記憶に基づき、制作を行なっている。

「中間体」をテーマとしたシリーズ作品の制作は、キルンワークという冷えたガラスを電気炉に入れ加熱する事でガラスを成形する技法で制作した。耐火レンガで囲まれた型を窯内に設置し、発泡剤と金属酸化物を混ぜた粉ガラスを型に入れる。高温でガラスが加熱膨張し、閉じた型空間全体を満たす。この過程で、私はガラスの温度を制御することによって造形をコントロールするが、ガラスの膨張や収縮、重力なども造形に影響する重要な要素である。実際に「中間体」という言葉が存在し、化学の分野では「目的とする化学反応の途中に生じる化合物」を意味する。この言葉の概念は私自身の制作にも当てはまり、作品は制作の目的ではなく、制作という行為から生じた「中間体」だと考える。また「中間」は、物と物との間の目に見えないつながりだと考えている。私は自身と他人、時間と空間との関係の考察を、作品を通して表現したいと考えている。「中間」という意識を持って制作した作品が自身と他人、時間と空間の繋がりになることを狙いとしている。

袁方洲