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ミシェル・セハ、エリオット・ジュン・ライト
2022年5月7日 - 5月28日

Tokyo International Galleryでは、5月7日よりミシェル・セハとエリオット・ジュン・ライトによる二人展《11》を開催いたします。

ミシェル・セハは1988年カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ、メキシコ系アメリカ人の芸術家。3Dレンダリングソフトウェアを用い、凍結された時空間の中に脈打つ生体識別機能を持った形象とでもいうような、抽象的なドローイングやスカルプチャーを製作。彼女の創造は常に物理的形象と仮想空間的形象を行き来し、これら2つの空間を同一のものとして扱っている。そして創作を重ねるうち、その二つの境界はさらに曖昧なものへと変化を続けている。今回の一連の作品は、(セハ自身が経験する)精神の鬱状態、創造力や製作意欲に壊滅的な影響を及ぼす精神状態そのものから着想を得ている。これは作品のそれぞれの表題にも表れており、製作時の彼女の精神がたどった軌跡を描き出すのと同時に、スカルプチャー作品の表面下にある、得体の知れない何かの物理的存在を示唆している。セハにとって、遊びや自己抽象化はネガティブな感情を中和する行為だ。それはあたかも、集中し耽溺する、ということが心の解放への触媒として作用しているかのようである。

エリオット・ジュン・ライトは、1984年バージニア州ハイランド・スプリングス生まれ、韓国系アメリカ人の芸術家。ミクストメディア・アッサンブラージュやスカルプチャー作品を製作。乾燥食品、美容用マスク、年代ものの『アーキテクチュラル・ダイジェスト』誌などの日用品や、組み立てユニット用押出アルミフレームといった工業品など多様な素材を混ぜ合わせ、ハイブリッド・オブジェクトを生み出す。そこでは「アジアン・アイデンティティ」を表象する多種多様な記号が点在し、また瓦解している。これらの記号(多くは文化産業によって製造されたもの)は、アイデンティティを形成する素材として機能するものであるが、それはまたどのようにして我々の上に投射されているのか、という問いにライトは形を与えている。

この展覧会でお届けするのは、アーティスト、ミシェル・セハとエリオット・ジュン・ライト夫妻の一連の近作である。セハとライトはパートナーとなって以来11年、個々人での創作活動を続ける傍ら、折々で共同制作を行ってきた。彼らは2011年8月頃にオンライン上で知り合い、関係は短い間にコラボレーション作品やグループ展へと発展する。現在、二人は共に東京に拠点を置き活動を続けている。今回のTokyo International Galleryでの展示は彼らにとって初のコマーシャルギャラリーでの展覧会となる。《11》では、両者の作品を共に提示することにより、作品制作において一見全く違うアプローチを取っているかのように見える二人のアーティストが、共にメディア、特にデジタルメディアとカルチュラルメディア、とある特殊な関係を内包しているということが顕になる。

過去の歴史において、新しいテクノロジーの台頭が新しい文化形式の登場を可能にしてきたということに疑いはないだろう。しかし、今日の新しいテクノロジーは、過去に成立した文化形式の焼き直し、ないし繰り返しに追従するものになってしまった。これはファッション、映像、音楽、デザイン、そしてアートといった、過去に描かれた未来像へのノスタルジーへ浸かり切った分野において顕著だ。言うならば「あの感じ(ヴァイヴ)」だろうか。屍にもう一度息を吹き込むため、過去に成功した事例を掘り返し、そうしてそれがまた短い日の目を生きる、という無限ループ。この現象は我々の文化状況について、何を物語っているのだろうか?その場しのぎの解決策や、功を焦り過去の成功例の反復を求めてきた新自由主義の支配の結果なのだろうか?あるいは、我々がその一端を成している文化は、それが陥ってしまった状況故に、繰り返る成立済みのカルチュラルモードにしか魅力を感じられなくなり、馴染みのものに囲まれた安心安全の中に自らを幽閉しているのだろうか?

■アーティスト
ミシェル・セハ
エリオット・ジュン・ライト

■開催概要
会期:2022年5月7日(土)- 5月28日(土)
開廊時間:12:00 – 18:00(火 – 土) ※日月祝休廊

■会場
TOKYO INTERNATIONAL GALLERY
〒140-0002 東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA Art Complex Ⅱ 2F
アクセス:東京臨海高速鉄道りんかい線「天王洲アイル駅」から徒歩約8分、東京モノレール羽田空港線「天王洲アイル駅」から徒歩約10分、京急本線「新馬場駅」から徒歩約8分