EXHIBITIONS

Threshold of Emergence

Threshold of Emergence

2026年9⽉9⽇(⽔)〜 2026年10⽉24⽇(⼟)

Tokyo International Gallery、⾼屋永遠による個展
「Threshold of Emergence」を開催

株式会社 Tokyo International Gallery(品川・天王洲)では、2026 年 9⽉9⽇(⽔)から 10 ⽉ 24 ⽇(⼟)まで、⾼屋 永遠による個展「Threshold of Emergence」を開催いたします。

精妙な⾊彩、複雑なマチエール、ゆらめくような独特の奥⾏き—⾼屋の絵画を構成するこうした特徴 は、市販の絵の具や顔料にとどまらず、偏光パールや⾦属、CO2 由来ポリマーといった特殊な光学的性質を持つ素材や、⼟・灰・鉱物など特定の⼟地に由来する素材から⾃作された⾊材を通じて実現されています。

多様な素材を重ね合わせるこうした実践の根底には、世界を、⾃らの外側に独⽴して存在するものとしてではなく、⾝体と諸事物が互いに⼲渉し合うなかで、経験として⽴ち上がるものとして捉える視座があり、本展もまた、その延⻑線上に位置付けられます。

そうした視座はとりわけ、多様な物質を素材として扱うようになって以降、より具体的な問いへと深まっています。近年、⾼屋の関⼼は、⾊彩そのものの表現から、⾊彩を⽣じさせる物質の振る舞いへと移行してきました。光、環境、視点、⾝体との関係のなかで、物質がいかに異なる相を現し、⾒る経験を変容させるのかが、現在の制作における中⼼的な問いとなっています。

イメージが固定されたものではなく、その都度異なる仕⽅で⽣成する現象である以上、鑑賞者の⾝体もまた、イメージ=世界が⽣起する場の⼀部を成しています。作品の前に⾝体を置き、⾒る位置を変え、環境に⾝を委ねること—そうした経験は、この場においてのみ開かれるものです。Tokyo International Gallery の光と空間、⾝体、物質—これらが関わり合う中でどのような世界が⽴ち現れてくるのか—会場にてぜひご⾼覧ください。

=Exhibition Statement=

散逸構造は、まったく異なる秩序形成の原理、すなわち「揺らぎを通した秩序」に結びついている。
—イリヤ・プリゴジン


現象は、意味に先⽴って存在する対象ではなく、強度配分、環境条件、時間的変化、そして知覚する⾝体との関係によって、その都度構成される相互作⽤の場である。

本展が⾒つめるのは、その場が安定した像や意味へと回収される以前に⽣じる、微細な転位の過程である。ある作⽤が別の作⽤へ、ある秩序が別の秩序へ、ある価値がその反対物へと反転していくとき、現象はもはや単⼀の性質によって把握されることを拒む。

そこでは、親しいものが不穏な徴候を帯び、穏やかな気配が制御しがたい⼒へと変質し、破壊的に⾒えるものが再び⽣成の条件として⽴ち上がる。しかしその反転は、劇的な断絶としてではなく、濃度、痕跡、粒⼦、光、視点のずれといった、ほとんど知覚の周縁において⽣じる。

本展における閾値とは、単なる境界ではない。それは、意味が成⽴する直前、あるいは崩れた意味が別の秩序へと再編される途上に現れる、臨界的な場所である。

本展は、その臨界に⽴ち会う試みである。

⾼屋 永遠


プラットフォームとしての絵画—モダニズムとは別の仕方で

梅津元(批評家/キュレーター)

《罔象〈雷鳴〉》が私を惹きつける。その魅力的な空間は、手前に迫り出してくる感覚を湛えている。そのことは、より平滑な印象の《無題(存在するとは別の仕方で)》と比較すると明瞭になる。この3点では、視覚的には、物理的な表面の少し奥側に、浅い空間が感じられる。コンセプト、素材、技法が相乗効果を上げ、完成度は高く、絵画に客観性を与えている。だが、自らの知覚と身体を総動員して絵画と対峙する経験は、主観的なものであり、そのような個人的な体験に由来する充実感と高揚感において、《罔象〈雷鳴〉》は他の作品を凌駕している。意図された目的を高いレベルで遂行する能力のその先で、絵画の魔術的な魅力は、どのように出現するのか。
《罔象〈雷鳴〉》のもうひとつの特徴は、抽象絵画でありながら、画面から実体性が感じられる点である。類似する傾向の隣接する2点は、雲や煙のような不定形なイメージであり、実体性は希薄である。一方、《罔象〈雷鳴〉》は、ギザギザした輪郭の葉の重なりを感じさせ、実体性が感じられる。ここにおいて、迫り出す空間と、画面から感じられる実体性が、密接に関係していることが判明する。暗い部分に影を感じ、明るい部分にハイライトを感じるが、そのハイライトは、画面から逆措定される実体的な空間において、最も手前に位置している。それ故、《罔象〈雷鳴〉》は、リアルな空間的な手応えをもたらすのであり、その前に立つと、自らの身体と知覚が十全に稼働していることを自覚するのである。

《無題(空脈Ⅲ)》が私を惹きつける。えもいわれぬ不思議な画面に向き合っていると、映像的という言葉が脳裏をよぎる。だが、この言葉は何を意味しているのか、その内実を探索する必要がある。表面的には、モニターを連想させるプロポーションや、他の作品には見られない多様な色彩が、映像的という言葉を惹起するといえる。しかし、より重要な論点は、映像装置によって実現する視覚体験のアナロジーとして、この絵画がとらえられていることである。まず、輪郭がぼやけたイメージは、カメラの焦点があっていないアウトフォーカスな画像を想起させる。また、流れるようなイメージは、速い動きを持続する時間においてとらえた映像を想起させる。
このように、映像的という言葉の内実へと分け入ることで、《無題(空脈Ⅲ)》の特徴をとらえることができるようになるだろう。奥へと延びる水平的な面、中央付近での渦巻くような空間、画面下方に見られる垂直的な面、輪郭が溶けるような形象の感覚、時間が循環しているような感覚、それらのすべてが、多様な色彩とともに定着された画面は、どこか北ヨーロッパ的な神話の世界を想起させ、現実の時空とは異なるパラレルワールドへと見る者を誘うのである。
《無題(空脈Ⅲ)》のユニークな特質を、次のように表現することは可能だろうか。この作品は、アメリカ型のモダニズム、フォーマリズムの絵画が存在しなかった、もうひとつの歴史の、その先に、出現したのである、と。そのパラレルワールドにおいては、当然ながら、クレメント・グリーンバーグに代表されるフォーマリズム批評も存在しない。その想定においてこそ、高屋永遠の絵画を、「プラットフォームとしての絵画」と位置付ける可能性が開かれるのである。

ここでは紙幅の関係で2点の作品への言及にとどまるが、最後に、高屋の絵画をとらえるフレームとして、「プラットフォームとしての絵画」を提案したい。前述した通り、グリーンバーグは存在しないパラレルワールドであるから、絵画をとらえる別な論理が必要となる。想起すべきは、エティエンヌ・ジルソンの『絵画と現実』である。絵画を存在論からとらえるジルソンの理論が、素材としての物質と絵画面としての光を統合しようとする高屋の実践を照射してくれるであろう。高屋の絵画は、「異質な要素が出会うプラットフォーム」として、とらえることができるのである。また、高屋の絵画は、自己完結的な形式に閉じるのではなく、鑑賞者の身体性と、鑑賞行為における時間性を内包しており、鑑賞者とのインターフェースとして機能するプラットフォームとなっている。
そして最後に、高屋の絵画が北欧的な神話の世界を想起させることの意味を考えてみよう。ここで想起されるのは、ロバート・ローゼンブラムの『近代絵画と北方ロマン主義の伝統』である。この論考を参照する上でも、仮説として提示した、アメリカ型のモダニズム、フォーマリズムの絵画が存在しなかった、パラレルワールド的世界を想定してみる。すると、ローゼンブラムが指摘する北方ロマン主義の伝統は、マーク・ロスコに代表されるアメリカの絵画に接続されることはなくなるのである。では、北方ロマン主義の伝統は、そのパラレルワールドでは、どこに接続されるのか、その問いに応える実践例のひとつとして、高屋の絵画が浮上してくるのである。このような発想は、森や霧や水面などを舞台に、見えないものが幻想的に描かれる北欧のロマン主義の絵画、例えば美術史においては傍流と位置付けられてしまうノルウェーやフィンランドの画家を、高屋の絵画の原理的な先駆者として再発見することを可能にするだろう。美術史を固定されたものとすることは思考の硬直であり、美術史は常に更新され続けなければならない。
高屋永遠の実践は、自然の再現や模倣ではなく、自然そのものとして存在する「出現としての絵画」を顕現させることだろう。

ARTIST PROFILE

アーティストプロフィール

⾼屋 永遠

⾼屋 永遠

1992年東京都⽣まれ、東京拠点。光学現象と素材の探究を軸に、絵画表現を光・物質・空間に⽣起する現象として展開する。
化粧品原料、⼟、鉱物、CO₂活⽤素材などを⽤い、素材の物理的特性や⼟地の記憶が光・視点・環境によって変容する視覚経験を⽴ち上げる。
2022年より資⽣堂みらい開発研究所と共同研究を実施。
主な個展に、「あるいは、私でないような」(デザインフェスタギャラリー、2014 年)、「It calls: shades of innocence」(Lurf Gallery、2024 年)、「無限の形象」(銀座三越ギャラリー、2025 年)、「真空の輪郭」(鎌倉画廊、2025年)、「re: materiality」(hakari contemporary、2025 年)など。
ART FAIR TOKYO、Tokyo Gendai、⽇本国際芸術祭(関⻄万博)など国内外のアートフェアに出展。
2009年 第83回国展 入選(国立新美術館、東京)


公式Webサイト:https://towatakaya.com/
Instagram:https://www.instagram.com/towatakaya

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OVERVIEW

開催概要

展示会タイトル
Threshold of Emergence
開催期間
2026年9⽉9⽇(⽔)〜 2026年10⽉24⽇(⼟)
開廊時間
10:00 – 19:00
休館日
日曜、月曜、祝日(火曜日は事前予約制)
事前予約のみ営業
火曜日 12:00 – 18:00(1時間枠)
【予約フォーム】 https://b-book.run/@tig0e37257563b82de3
※上記URLより3日前までにご予約ください
※作品鑑賞の他、作品購入や取材対応なども上記URLよりご予約ください
※予約を承ることができない場合もございますので、予めご了承ください
オープニングレセプション

開催日 : 2026年9月9日(水) 18:00-21:00(予約不要・入場無料)
会場  : Tokyo International Gallery

会場
Tokyo International Gallery